【社会保険料の負担】会社員の副業の法人成りの検討②【管理コストの増加】

前回の、税金カテゴリーの投稿では、会社員の副業における、「法人成り」のメリットを、学びました。

<参考記事>
【2種類の節税メリット】会社員の副業の法人成りの検討①【税率差と累進課税】

副業からの所得が多額になると、「法人成り」することで、個人事業と比較して、「税率差を利用した節税」や「永久的な節税」の選択肢が広がります。

つまり、個人の累進税率よりも、低い法人税率を活用することや、所得を広く分散することで、家計全体としての税率を、引き下げることが可能となります。また、法人は、個人事業と比較して、必要経費の範囲を広く解釈できるうえ、「社宅家賃」や「出張旅費日当」などを活用することで、節税策の幅も広がります。

一方、「法人成り」することで、社会保険料の支払いや、管理コストの増加など、個人事業と比較して、追加的コストが生じることもあるため、今回は、「法人成り」のデメリットにつて、語りたいと思います。

社会保険料の増加

社会保険には、健康保険や厚生年金が含まれ、料率は、一定の上限金額に達するまでは、給与額の約30%となります。社会保険料は、原則として、会社と従業員が折半し、それぞれ、約15%ずつを負担します。

また、本業の会社で、社会保険に加入していれば、副業が個人事業であれば、社会保険料が課されない一方、会社形態で副業を実施する場合は、社会保険料の納付が必要となります。

副業が個人事業の場合

会社員が、本業の「給与所得」とは別に、「雑所得」「事業所得」「不動産所得」などの、副業の所得を得ている場合、本業の会社で社会保険に加入していれば、個人事業として営む副業の儲けには、社会保険料は課されない、とのルールがあります。

<参考記事>【副業の必要経費と損益通算】会社員の個人所得税の考え方③【雑所得と事業所得】

社会保険料は、合計30%もの高率となるため、副業を、個人事業として行うことで、節税の可能性が広がるばかりでなく、社会保険料の観点からも、効率的に、手取額を増やすことができます。

副業が法人形態の場合

副業を法人形態で行う場合、その法人において、社会保険は強制加入となります。

法人形態の場合、法人レベルでの儲けを、事業主本人や配偶者などに還流することを目的に、「役員報酬」を支払うことが考えられますが、その場合、個人レベルで「給与所得」の課税があるばかりでなく、報酬の約30%の社会保険料が課されます。

社会保険料は、法人と従業員で、約15%ずつ折半しますが、事業主本人が所有する法人であれば、実質的に、事業主が全額を負担することと同義となります。

そのため、法人と個人の税率差などを利用し、節税のために「法人成り」したにもかかわらず、追加的な社会保険料で、不利な結果とならないよう、しっかりプランニングする必要があります。

法人の社会保険料の軽減方法

法人から、事業主本人や配偶者などに「役員報酬」を支払うと、「給与所得」の課税に加え、約30%の社会保険料が課されるため、様々な、社会保険料の軽減方法が検討されています。

役員報酬の引き下げ

まず、「役員報酬」を引き下げたり、支払わないとの、選択肢もあります。

この場合、法人レベルでは、「役員報酬」による経費計上ができず、その分、法人税が多額に課されることになります。

そのため、利益を法人に留保することで課される法人税率と、「役員報酬」を支払うことで負担する社会保険料率や、個人所得税の累進税率を、比較衡量し、事業主の家計における資金需要も勘案のうえ、適切な報酬額を決定する必要があります。

非常勤役員の報酬

非常勤役員には、社会保険への加入義務がないため、配偶者などを、非常勤役員とすることで、社会保険料を節約する方法も一般的です。

ただし、非常勤役員は、業務の実態が限定的なことから、報酬額も、比較的低額とせざるを得ない点には、留意が必要です。

社宅家賃・出張旅費日当などの活用

また、法人から事業主などに対し、「社宅家賃」や「出張旅費日当」などを通じて、ベネフィットを供与する手法も有効です。

これらの費用は、法人側で経費計上される一方、事業主本人側では所得税が課されないため、税務上、非常に効率的であるばかりでなく、社会保険料の対象にもなりません。

さらに、将来的には、法人から、事業主本人に、退職金を支払うことで、社会保険料の対象とならないうえ、事業主側は「退職所得」として、有利な個人所得税の取り扱いを受けることもできます。

管理コストの増加

会社員の副業において、個人事業ではなく、「法人成り」により、法人を通じて事業を行う場合、様々な追加コストが生じます。

そのため、これらの追加コストを勘案しても、個人事業より有利になるか、検討する必要があります。

設立コスト

法人の形態には、「株式会社」や「合同会社」などがありますが、「株式会社」であっても、取締役1人・資本金1円から設立できるようになったため、以前に比べ、「法人成り」が身近になっています。

「株式会社」を設立する場合、定款の作成や、設立登記などで、20万円程の費用がかかります。

税務申告コスト

法人の税務申告は、個人事業と比較して、複雑になる傾向があり、専門家である税理士に依頼すると、年間30万円程度の費用がかかります。

また、法人の場合は、個人事業と比べて、税務調査の対象となる頻度が高いと言われており、税務調査への対応コストも、追加コストと捉えることができます。

住民税均等割

さらに、法人の場合は、住民税について、所得に応じて課される「所得割」とは別に、「均等割」と呼ばれる税金があります。

「均等割」により、個人事業と異なり、たとえ赤字の年度であっても、約7万円ほどの税金がかかるため、追加コストとして認識する必要があります。

まとめ

会社員の副業の規模が大きくなると、「法人成り」することで、「税率差を利用した節税」や「永久的な節税」の可能性が広がります。

社会保険料には、留意が必要で、副業が個人事業の場合、本業の会社で社会保険に加入していれば、副業での儲けに、社会保険料が課されない一方、法人形態の場合は、社会保険が強制加入となります。そのため、法人レベルの儲けを、事業主本人や配偶者などに、「役員報酬」で還流すると、報酬額の約30%が、社会保険料として課されます。

また、法人は、個人事業と比較して、設立コストや税務申告コストが、追加的にかかる傾向にあります。

会社員が、副業の「法人成り」を検討する際には、事業主の家計における資金需要も勘案のうえ、法人形態の場合の税金・社会保険料と、個人事業の場合の税金を、比較衡量したうえ、有利不利を判断する必要があります。

さて、次回は、会社員の副業を「法人成り」する場合の、法人から事業主本人への、資金の還流方法について、より詳しく、語りたいと思います。

<次回記事>
【個人への資金還流】会社員の副業の法人成りの検討③【高税率や社会保険料の軽減方法】

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