【副業の必要経費と損益通算】会社員の個人所得税の考え方③【雑所得と事業所得】

前回の税金カテゴリーの投稿では、会社員の「給与所得」の「必要経費」は、「給与所得控除」として、一律に定められているものの、「所得控除」や「税額控除」を活用することで、多少の節税余地があることを、学びました。

<参考記事>
【様々な節税方法】会社員の個人所得税の考え方②【ふるさと納税と住宅ローン控除】

復習になりますが、税金の計算は、所得の種類ごとに、「収入」から「必要経費」を差し引き「所得」を算出し、それらを合算した「総所得金額」から「所得控除」を差し引いた金額を基に税額を計算し、その税額から、「税額控除」を差し引き実際の納税額を算出する、との流れです。

今回は、副業を持つことで、「必要経費」を計上することを可能とし、さらに、赤字が出る場合は、「損益通算」で「総所得金額」を圧縮できる可能性がある旨を、語りたいと思います。

副業によるメリット

会社員として「給与所得」しか得ていない場合、たとえ仕事に関係する支出であっても、「必要経費」として計上することはできません。

一方、副業をしている場合、「雑所得」または「事業所得」のいずれかの区分となり、「必要経費」の計上が認められます。

副業の必要経費

物販などの副業で、仕入れ費用などが生じる場合、「必要経費」として計上できます。これらの費用は、副業に直接関連して発生する費用なので、「必要経費」となるのは、いわば、当然です。

より効果的なのは、「給与所得」のみの時にも発生していた支出の一部を、副業の「必要経費」として計上できるようになる点です。例えば、家賃・光熱費・通信費・車両代・書籍代・セミナー代・飲み会代などが該当し、これらの一部が、副業と紐付いているのであれば、「雑所得」や「事業所得」の「必要経費」として計上することができます。

純粋な「家事費」は「必要経費」にできませんが、副業に関連する部分が含まれる支出であれば、「家事関連費」として、該当部分を「必要経費」にできます。一般的には、副業と家事に関連する割合を、面積・日数・時間などで按分し、副業に関する「必要経費」を算出します。

副業による社会保険料

副業のもう一つの大きなメリットとして、「社会保険料」が掛からないことがあります。

源泉徴収票を見ると、所得税や住民税に加え、厚生年金などの「社会保険料」が、高額であることが見て取れます。「社会保険料」は、本業の会社で加入していれば、副業での儲けには課されない、とのルールがあります。

そのため、追加的な収入を得る場合、「給与所得」と副業を比較すると、副業の方が、「必要経費」計上の余地が大きいことに加え、「社会保険料」が課されない影響も大きく、最終的な手取額は、副業の方が、かなり有利な結果となります。

雑所得と事業所得の課税

会社員が副業を行う場合、一般的には、「雑所得」または「事業所得」に区分されます。税法的には、「事業所得」に区分された方が、有利となります。

事業所得の損益通算

まず、「事業所得」の大きなメリットとして、赤字が生じる場合の「損益通算」があります。

「収入」から「必要経費」を差し引いた「事業所得」が赤字となる場合、「給与所得」などと「損益通算」し、「総所得金額」を計算することができます。そのため、副業の「事業所得」赤字が、最終的な納税額を軽減する効果を生み、確定申告により、税金還付を受けることができます。

一方、「雑所得」の場合、赤字となっても、他の所得と「損益通算」できません。「雑所得」は、10区分ある所得のうち、他の9区分のいずれにも属さない所得、との位置付けで、そもそも、「赤字の雑所得」との概念がないためと考えられます。

事業所得の青色申告

事業者として「事業所得」を得る場合には、適切な帳簿をつけていることなどを条件に、「青色申告」が認められています。「青色申告」には、様々なメリットがありますが、以下が代表例となります。

青色申告特別控除

「青色申告」をすることで、「必要経費」に加え、「青色申告特別控除」として、最大65万円の特別控除を受けることができます。

損失繰越

「青色申告」により、赤字を最長3年間の繰越しすることができます。つまり、「給与所得」などと「損益通算」しても、なお、赤字が残る場合、翌年以降に赤字を繰り越すことで、翌年以降の税金を軽減することができます。

青色事業専従者給与

「青色申告」をすることで、一定の条件のもと、配偶者などに支払う給与を、「必要経費」とすることができます。本人側での「必要経費」による税金軽減効果と、配偶者側での「給与所得」の税金を、最適化することで、家族全体で見れば、高い節税効果が期待できます。

申告不要の雑所得

一方、「雑所得」が「事業所得」に対してメリットがあるとすれば、申告不要の特例があることです。これは、年末調整のみで課税関係が完了する会社員に限り、「収入」から「必要経費」を差し引いた「雑所得」が、20万円以下でれば、申告不要となる特例です。

ただし、会社員であっても、医療費控除などで、確定申告が必要となる場合は、原則通り、「雑所得」の申告が必要となります。また、住民税には、このような特例はありませんので、申告不要の「雑所得」がある場合、別途、住民税申告が必要となります。

まとめ

会社員が「給与所得」以外に、副業として、「雑所得」や「事業所得」を得ることで、「必要経費」を計上する自由度が、大きく向上します。

特に、家賃・光熱費・通信費・車両代などの一部を、副業の「必要経費」として計上できる効果は、非常に大きいです。実際の支出額は、従前と変わらなくとも、「給与所得」と異なる所得を得ることで、それらの支出の一部が、税務上の経費と認められます。

また、「事業所得」は「雑所得」と比べて、「損益通算」や「青色申告」により、税務上、有利な取り扱いとなっています。そうであれば、副業を「事業所得」とし、「必要経費」や「青色申告特別控除」などのメリットを最大限に活用し、赤字を創出し、「損益通算」により、「給与所得」の税金を取り返そうと考える人もいるかも知れません。

世の中は、それほどうまくは行かないもので、「雑所得」と「事業所得」の区分には一定のハードルがあり、「事業所得」を「青色申告」するためにも条件があります。次回は、これらのハードルや条件について、語りたいと思います。

<次回記事>
【副業の事業所得には高いハードル】会社員の個人所得税の考え方④【開業届は1カ月以内】

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