【様々な節税方法】会社員の個人所得税の考え方②【ふるさと納税と住宅ローン控除】
前回の税金カテゴリーの投稿では、会社員は、「給与所得控除」により「必要経費」が一律に定められており、節税余地が限定的であることを、学びました。
<参考記事>
【サラリーマンの節税】会社員の個人所得税の考え方①【給与所得控除で困難】
重要なので繰り返すと、税金の計算は、所得の種類ごとに、「収入」から「必要経費」を差し引き「所得」を算出し、それらを合算した「総所得金額」から「所得控除」を差し引いた金額を基に税額を計算し、その税額から、「税額控除」を差し引き実際の納税額を算出する、との流れです。
会社員の「必要経費」が、「給与所得控除」として一律に決まっている中で、節税余地があるのは、非課税となる「収入」、「所得控除」「税額控除」になります。
非課税となる収入
会社員が、会社から受けるベネフィットの中には、非課税となるものがあります。「借上げ社宅」や「通勤手当」が該当するものの、いずれも、会社側の制度に依拠する部分が大きいです。
借上げ社宅
会社員自身が物件を選び、会社が賃貸借契約を締結し、会社員は、税法で定められる最低金額のみを会社に支払う場合、家賃実額との差額は「福利厚生費」の扱いとなり、会社員側では非課税となります。
一方で、同様のベネフィットが、「住居手当」として支払われると、「給与所得」となり、課税対象となります。
「借上げ社宅」制度を利用することで、所得税の節税になるばかりでなく、厚生年金などの社会保険料も課されず、「住居手当」と比較して、会社員の手取額が増えることになります。
通勤手当
月額15万円までの「通勤手当」の支給は、所得税の計算上、非課税となります。そのため、給与の中に、通勤費用相当が含まれている場合と比較して、節税効果があります。
ただし、「借上げ社宅」とは異なり、所得税で非課税となる「通勤手当」であっても、社会保険料の対象には含まれる点に、留意が必要です。
所得控除
「所得控除」は、「総所得金額」から差し引かれる控除で、「必要経費」と同様、税率を掛ける前の課税所得を圧縮する効果があります。会社員が、節税策として活用できる「所得控除」には、以下のような控除があります。
医療費控除
会社員本人のみならず、生計を一にする家族の医療費のうち、保険金などで補填される金額を差し引いた金額が、10万円を超える場合、その超える部分を「医療費控除」できます。
「医療費控除」の対象となるのは、病院に支払う費用のみならず、医薬品の購入費用や、医療機関までの交通費なども含まれますので、出産や入院などで医療費が10万円を超える可能性のある年は、あらかじめ、関係する費用の領収書を集めておくことを、おすすめします。
なお、海外駐在する年は、「医療費控除」の適用に留意点がありますので、参考記事を参照してください。
<参考記事>【海外赴任時】日本における税金の留意点②【住宅ローン控除】
寄付金控除(ふるさと納税)
「ふるさと納税」とは、特定の地方自治体へ税金相当額を支払った際、「寄付金控除」の活用により、当年の所得税が減額されることに加え、翌年の住民税も減少することで、実質的に、2,000円で、地方自治体から返礼品を貰うことができる制度です。
節税というよりも、一定の限度額の中で、税金相当額を前払いすることにより、最終的な負担額がほぼ変わらずに、自治体から返礼品を貰うことができるという制度で、多くの会社員に利用されています。
なお、海外駐在の可能性がある会社員は、ふるさと納税に大きな落とし穴がありますので、特に、支出のタイミングに気を付けてください。
<参考記事>【海外赴任時】日本における税金の留意点①【ふるさと納税】
小規模企業共済等掛金控除
将来の年金のためのiDeCo(個人型確定拠出年金)などを拠出すると、拠出額が「小規模企業共済等掛金控除」として、所得から差し引かれ、節税になります。また、利息や運用益は非課税で、将来の受取時にも税制上の優遇措置があります。
ただし、拠出限度額が比較的低かったり、途中解約が原則できないとの制約もありますので、積極的な節税策としては、限界があります。
その他の控除
会社員の場合、多くの「所得控除」は、会社の「年末調整」で反映されるため、控除に必要な情報を、適切に提出することが重要です。
例えば、扶養家族の情報を、会社に適時に報告することで「扶養控除」を適用し、生命保険や地震保険の金額を適切に報告することで「生命保険控除」や「地震保険控除」を適用することができます。
税額控除
「税額控除」は、「総所得金額」から差し引かれる「所得控除」と異なり、税額を直接減額する効果があるため、節税メリットが非常に大きいです。会社員でも活用できる、「税額控除」の代表例は、「住宅ローン控除」です。
住宅ローン控除
住宅の購入や売却には、税制上、有利な制度が用意されています。住宅購入時に、住宅ローンを組む場合、一定期間に渡り、上限額はあるものの、住宅ローン残高の1%を「税額控除」することができます。
ポイントは、税額から直接差し引かれる「税額控除」となる点で、例えば、支払利息の利率が1%を下回る場合、「税額控除」で1%相当の税金が減少することで、年間フローでは、「住宅ローンを借りているのに儲かった」との状態になります。
住宅ローンには、団体信用保険による、保険効果もあることから、手元現金が、比較的潤沢にある人でも、住宅を購入する際、住宅ローンを多めに借りて、節税効果・保険効果を享受し、手元現金は、別の投資に割り振るべき、と考える人も多いです。
なお、住宅ローンで住宅を購入し、その後、海外赴任となる場合、海外赴任中は、住宅ローン控除が適用できなくなる点に、留意が必要です。
<参考記事>
【海外赴任時】日本における税金の留意点②【住宅ローン控除】
【駐在前がおすすめ】海外赴任可能性のある会社員の不動産購入①【マンション資産価値が重要】
まとめ
会社員の「給与所得」に係る「必要経費」は、「給与所得控除」として一律に決まってしまうものの、非課税の「収入」や「所得控除」「税額控除」を通じて、節税する余地はあります。
その中でも、ふるさと納税による「寄付金控除」や、住宅購入時の「住宅ローン控除」は、メリットが大きく、多くの会社員に利用されています。ただし、いずれも、年の途中で海外赴任してしまうと、控除のメリットを取れないばかりか、無駄な税金相当額を支払うこともあるため、駐在可能性がある場合は、慎重な検討が必要です。
次回は、会社員が、「必要経費」に、より融通を効かせるため、「給与所得」とは別に、「事業所得」や「不動産所得」を持つことの効果について、語りたいと思います。