【駐在前がおすすめ】海外赴任可能性のある会社員の不動産購入①【マンション資産価値が重要】

前回までの、不動産カテゴリーの投稿では、僕が、NY赴任に伴い、NY郊外の物件を賃借し、実際に暮らした体験の中で得た、物件選択のノウハウを、述べてきました。

<参考記事>
【まとめ】駐在員家族のニューヨーク郊外物件の選び方【夢のような生活のおすすめとコツ】

今回からは、少し時代をさかのぼって、僕が、日本でマンションを購入し、管理組合活動の経験を通じて得た、日本不動産に係る知見を、駐在員としての視点も交えて、語りたいと思います。

今回は、第1回目として、そもそも「転勤可能性のある会社員が家を買うべきか」との論点から、語りたいと思います。

これは、古くからある議論で、ライフステージにおける必要性や、物件所有の満足感など、定性的な検討もあるものの、定量的な検討に限れば、「Yes」と考えます。

「家を買ったら転勤になった」というのは、有名なジンクスで、ネガティブな文脈で使われることが多いです。僕としては、定量的な観点からは、「将来の転勤を狙って、今、家を買う」とのスタンスを取ることで、「会社員 X 海外駐在」のメリットを最大化できると考えます。

駐在前に不動産を購入するメリット

個人の財産状況を検討する際、BS (Balance Sheet)アプローチで考えると、BS 左側の「総資産」から、BS右側上部の「負債」を差し引いたあと、BS右側下部に残る「純資産」の多寡が重要になります。

駐在前に住宅を購入し、その後に駐在することで、「純資産」にどのような好影響があるか、見ていきたいと思います。

不動産購入による純資産増加

住宅ローンを利用して、住宅を購入することにより、BS左側の「総資産」が膨らみます。一方、住宅ローン残高がBS右上の「負債」となり、「総資産」と「負債」のNet額が、BS右下の「純資産」となります。購入時点では、頭金として拠出した、手持ち現金相当額が、不動産としての「純資産」と入れ替わるに過ぎません。

次に、住宅ローンを月々返済することで、BS右上の「負債」が減少していき、Netの「純資産」が増えることになります。賃貸であれば、毎月の家賃を支払っても、「純資産」を増やすことができない一方、自ら住宅を購入していれば、月々のローン返済を通じて「純資産」を増やすことができます。

これは、住宅ローンを利用し、レバレッジを掛けて資産を購入することにより、自らの収入だけでは成し得なかった、「純資産」の増加が可能となることを、意味します。

ここまで読んだ方で、BS左側の「総資産」が毀損してしまうと、Netの「純資産」も毀損してしまうのでは、と疑問に思われた方は、非常に鋭いです。まさに、それこそが、住宅購入の最大のポイントで、「負債」の減少スピードを超えて、「総資産」が減価してしまうと、レバレッジを掛けて資産を購入したとしても、Netの「純資産」を減らす結果となってしまうのです。

そのため、住宅購入においては、新築プレミアム、取引コストなどを加味した上でも、減価が少ない物件を購入することが重要です。

税務上の優遇措置

住宅ローンは、会社員としての信用力と物件の担保力で、事業ローンと比較して、低金利・長期間の、非常に有利な条件で、資金調達できる仕組みです。

利息支払いは、「純資産」を減少させてしまう効果があるのですが、この点、「住宅ローン控除」制度があり、一定条件のもと、利息相当額を、「税額控除」として、給与所得などの税金から、差し引くことができます。

現在の低金利環境下では、利息支払額と税金戻り額が、逆ザヤとなり、「純資産」を増加させる効果がある場合さえあり、レバレッジを掛けた資産購入を、後押しする制度ともいえます。

駐在に伴う資産形成の加速

ここまでの「純資産」増加ロジックは、駐在有無に拘わらず、全ての会社員にいえることです。

これに加えて、物件を購入した状態で、駐在することにより、「純資産」の増加スピードが、飛躍的に加速します。

留守宅の賃貸

会社都合での転勤の場合、赴任先の住居費用は、会社負担となるケースが多いです。その場合、住宅ローン返済と、赴任先での新たな家賃を、二重で支払う心配はありません。そのため、住宅ローンは、これまで通り、月々の返済を行う一方、留守宅の賃貸収入は、追加的な、住宅ローン返済原資となります。

つまり、通常の住宅ローンの返済で、「純資産」が増加していくことに加え、賃貸収入を原資とするローン返済で、「純資産」の増加スピードが加速します。仮に、税後200万円ほどの年間家賃収入があるとすると、5年間の駐在期間で1,000万円、帰任後に借上社宅制度があれば、更なる上増しが可能、との計算になります。

レバレッジを掛けて、住宅という資産を保有しているだけで、海外駐在に伴い、ほぼノーリスクで、通常の投資では成しえないリターンを実現し、「純資産」増加を加速させることができます。

ただし、厳密な効果を計算する際には、日本・赴任国両方の個人所得税や、住宅ローン控除不適用の影響もある点には、留意してください。

<参考記事>
【まとめ】アメリカ駐在員の日米での税金【二国間での課税関係の最適化】
【海外赴任時】日本における税金の留意点②【住宅ローン控除】

留守宅の売却

市況が低い時に住居を購入し、海外赴任時に、運よく市況が上昇している場合、売却によるキャピタルゲインで、「純資産」の増加を確定させる、との選択肢もあります。

通常、市況上昇時に住居を売却すると、新たに購入する物件も価格が上昇しているので、手元にキャピタルゲインが残らない、という問題があります。そのため、売却後、しばらく賃貸で、市況が落ち着くのを待つ人もいます。

この点、駐在により、赴任先での住居費用は、会社側が負担するのであれば、よりキャピタルゲインを確定させやすい環境にある、と言えます。また、ライフステージの段階によっては、定量面だけで、住居を売却するのは、困難な場合が多いですが、海外赴任に伴い、強制的に居住地が変更されるのであれば、売却のハードルは、かなり下がります。実際、僕のまわりにも、数千万円単位で、キャピタルゲインを確定した人が、沢山います。

なお、売却の場合も、税金面の検討は必須ですが、「主たる住居」の売却益には、税務上、様々な優遇措置が講じられています。

<参考記事>【赴任後3年内の売却でメリット最大化】米国駐在員の留守宅売却に係るアメリカ税金【最大50万ドルの非課税枠】

まとめ

今回は、駐在可能性のある会社員が、事前に住居を購入することの、メリットを述べました。

資産形成のためには、会社員として、単に労働力を切り売りするだけではなく、投資などを通じて、「純資産」を増やす仕組みを構築することが重要です。

実需による居住用の不動産の購入は、住宅ローンや税制優遇などを享受できるうえ、海外駐在することで、「純資産」の増加スピードを加速させることができます。また、市況によって、留守宅の賃貸または売却、いずれかの手法を取ることができる点も、メリットになります。

ただし、繰り返しになりますが、「純資産」の増加は、物件の資産価値が毀損しないことが大前提になりますので、次回は、住宅購入のデメリットやリスクを中心に、語りたいと思います。

<次回記事>
【住宅購入の定量的リスク】海外赴任可能性のある会社員の不動産購入②【近隣中古物件相場との比較は必須】

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