【サラリーマンの節税】会社員の個人所得税の考え方①【給与所得控除で困難】

前回までの税金カテゴリーの投稿では、駐在員として米国に赴任する場合の、日米での様々な課税関係を、検討してきました。

<参考記事>【まとめ】アメリカ駐在員の日米での税金【二国間での課税関係の最適化】

今回からは、もう少し一般的に、日本における「会社員」の課税関係と、その節税余地などを述べたいと思います。さらに、「副業」や「フリーランス」「法人成り」など、従来の「会社員」から、働き方の形態が変わると、どのように課税関係が変化するかについても、語っていきたいと思います。

今回は、第1回目として、日本人の最も代表的な働き方である、「会社員」の課税について学びたいと思います。

個人所得税の課税概要

まず、最初に、個人所得税の計算方法の概要と、「収入」「必要経費」「所得」および「所得控除」「税額控除」の考え方について、解説します。

節税を考えるうえでの、出発点として、これらの概念を理解することは、非常に重要です。

税額計算

税額を計算する際には、まず、所得の種類ごとに、「収入」から「必要経費」を差し引き「所得」を計算し、それらを、一定のルールに基づき、合算することで、「総所得金額」を算出します。つまり、「収入」は、経費差し引き前の金額、「所得」は、経費差し引き後の金額です。

次に、「総所得金額」から、「所得控除」を差し引いた金額に、税率を掛けることで、税額が算出されます。さらに、この税額から「税額控除」を差し引くことで、実際の納税額が算出されます。

所得の種類と損益通算

所得は全部で10区分あり、それぞれの所得区分に応じて、「総合課税」又は「分離課税」により課税されます。

「総合課税」となるのは、「給与所得」や「事業所得」「不動産所得」「雑所得」などで、それらを合算した合計額が、上述の「総所得金額」となり、累進税率により課税されます。

重要な点は、「総合課税」であっても、赤字を、他の所得の黒字と「損益通算」できない所得があるという点です。赤字が生じた場合、他の所得の黒字と相殺できるのは、「事業所得」や「不動産所得」などに限られ、「雑所得」などは、赤字を他の所得と「損益通算」できません。

一方、「分離課税」となるのは、不動産や株式に係る「譲渡所得」、一部の「配当所得」、「利子所得」「退職所得」などで、他の所得と合算しないで、独自の税率により課税されます。

所得控除

「所得控除」は、「総所得金額」から差し引かれる控除で、全部で14種類あります。

代表的な例は、「基礎控除」「配偶者控除」「扶養控除」「医療費控除」「社会保険料控除」「生命保険控除」「地震保険控除」「寄付金控除」などがあります。

税額控除

「税額控除」は、算出された税額から差し引かれる控除で、「所得」段階で差し引かれる「所得控除」と比較して、税額が直接減額されるとの観点から、より税金軽減メリットの大きい控除です。

「税額控除」の代表的な例は、「住宅ローン控除」と「外国税額控除」になります。

住民税

上記により、国税である所得税が計算されますが、住民税については、その年の1月1日現在で居住する自治体に対し、前年の所得に応じて計算された税額が賦課されます。

そのため、住民税は、所得税と比べて、1年遅れて徴収されることになります。

会社員に対する課税の特徴

上述のとおり、「収入」から「必要経費」を差し引き「所得」を計算するのですが、会社員の「必要経費」は、「給与所得控除」という形で一律に定められています。「源泉徴収」や「年末調整」とも相まって、会社員は、税意識が少ないままに、税金を徴収されている、というのが実態です。

給与所得に対する給与所得控除

会社員が、節税に対し融通が効かないと言われる最大の理由は、「給与所得控除」になります。

上記の「税額計算」で説明した通り、各種所得ごとに、「収入」から「必要経費」を差し引いて「所得」を計算するのですが、会社員の「給与所得」に対する「必要経費」は、一定の計算式で算定される「給与所得控除」として、一律で決められています。

つまり、他の「所得」を得る納税者であれば、その所得を得るために掛かった、様々なコストを「必要経費」として計上し、「所得」を圧縮することが可能ですが、会社員として、「給与所得」のみを得ている場合には、そのような選択肢はないのです。

源泉徴収と年末調整

会社員であれば、原則として毎月、会社が「源泉徴収」を行います。源泉徴収額には、所得税(各月ごとに概算計算)、住民税(前年所得により賦課)、厚生年金(社会保険料)、雇用保険が含まれます。源泉徴収票を見ると、所得税や住民税に加え、社会保険料の厚生年金も、かなり高額な徴収をされていることに、気づきます。

所得税については、各月の「源泉徴収」は概算額によるため、年末12月には、「年末調整」として、「所得控除」や「税額控除」の情報も加味したうえで、実額との精算を行います。会社側は、従業員の給与・年収情報を、税務署及び自治体に送付します。

「年末調整」で課税関係が終了してしまう大きな理由は、やはり、会社員の「必要経費」が、「給与所得控除」として一律計算されてしまうことによります。

なお、ふるさと納税に伴う「寄付金控除」や、「医療費控除」、初年度の「住宅ローン控除」がある場合などは、「年末調整」では対応できず、自ら「確定申告」を行う必要があります。

まとめ

個人所得税の計算では、「収入」から「必要経費」を差し引いて「所得」を計算しますが、会社員の「給与所得」の「必要経費」は、「給与所得控除」として、一律で決めらてしまっています。

また、多くの「所得控除」や「税額控除」も、積極的に節税を目指すというよりは、与えられたルールの中で、現状を適切に税金計算に反映する、との側面が強いです。

日本の会社員は、「源泉徴収」「年末調整」制度とも相まって、税金意識が非常に低いのが実態ですが、高額所得者になればなるほど、会社員として税金徴収されることの痛みは増し、その傾向は、年々強くなっています。

次回の投稿では、会社員の枠組みの中において、どのような節税ができるか、深掘りしていきたいと思います。

<次回記事>
【様々な節税方法】会社員の個人所得税の考え方②【ふるさと納税と住宅ローン控除】

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