【2種類の節税メリット】会社員の副業の法人成りの検討①【税率差と累進課税】

前回までの、税金カテゴリーの投稿では、3回にわたり、会社員の副業に係る消費税の考え方を、学びました。

<参考記事>
【インボイス方式】会社員の副業に係る消費税③【免税事業者のCash Flowに悪影響】

今回からは、会社員の副業における「法人成り」について、語りたいと思います。

会社員の副業であっても、一定規模になると、「法人成り」をして、法人として納税した方が、節税になるとの話を、聞いたことがあると思います。

以前にも説明した通り、節税には、「永久的な節税」「一時的な節税」「税率差を利用した節税」「必要経費の支払増加による節税」などの類型がありますが、「法人成り」により、主に、「税率差を利用した節税」や「永久的な節税」が期待できます。

<参考記事>【まとめ】会社員の個人所得税の考え方⑧【節税の4つのパターン】

税率差を利用した節税

個人所得税には、累進税率が課され、会社員が「給与所得」に加え、副業の所得を得ると、より高い税率が課されることになるため、「法人成り」が有利となる場合があります。

また、累進税率の仕組みにおいては、複数に所得を分散させることで、より低税率のメリットを享受することができるため、「法人成り」による、所得の分散が活用されます。

個人と法人の税率

個人の所得には、その金額に応じて、5%~45%の所得税が課され、さらに、10%の住民税や、税額の2.1%の復興特別所得税が、課されます。

この累進課税の仕組みにより、会社員が「給与所得」に加え、副業で所得を得る場合、その所得が「給与所得」にプラスして「総合課税」され、高い税率が課されることになります。

例えば、額面年収1,000万円の会社員であれば、すでに税率が高まっており、そこに追加的な副業所得を得ると、所得税・住民税合わせて約35%が課税されるうえ、段階的に約55%まで、税率が上昇することになります

一方、法人で事業を行う場合、法人税・住民税・事業税を合わせて、年間所得800万円までは約25%の税率、それ以上の部分でも約35%の税率となります。

そのため、高所得な会社員が、追加的に副業所得を得る場合や、比較的税率が低い会社員であっても、多額の副業所得を得る場合には、「法人成り」により、副業所得に、法人税率を適用させることで、全体として、節税となる場合が多いです。

法人と個人の所得分散

個人所得税は累進税率で課税され、法人も2段階の税率が適用されます。

そのため、1箇所に所得を集めて、高い税率を課されるよりは、なるべく所得を分散し、それぞれで、低い税率が適用されることで、全体として、節税することができます。

個人所得税における、「事業所得」の場合であっても、同一生計の配偶者などへの「青色専従者給与」により、一定の分散は可能ですが、法人で事業を行うことで、より効果のある分散が可能です。

例えば、法人で事業を営む場合、役員である事業主本人へ、「定期同額」や「事前確定届出」などの一定条件のもと、給与や賞与を支払うことができます。また、配偶者などへも、常勤役員や非常勤役員の報酬を支払うことができます。これらの支払いにより、法人側では所得が減少し、事業主本人や配偶者側では「給与所得」が認識され、所得を分散させることができます。

また、将来は、法人から、事業主本人に、退職金を支払うことで、所得が分散されるばかりでなく、事業主側は「退職所得」として、有利な個人所得税の取り扱いを受けることもできます。

法人で事業を営み、事業主本人や配偶者に、「給与所得」や「退職所得」を支払い、所得を分散させることで、法人所得税と個人所得税の合計が、一番少なくなるようなタックスプランニングができれば、効果的な節税が可能となります。

永久的な節税

法人で事業を行う場合、個人事業と比べて、同じ支出であっても、より経費として認められやすい傾向にあります。

また、法人から、事業主本人へ、社宅や出張旅費日当を提供することで、節税メリットを享受することができます。

これらの節税メリットは、「課税の繰り延べ」とは異なり、当期の節税の効果が、将来に渡り続き、将来の税金を増やすものではないことから、「永久的な節税」となります。

必要経費

個人事業の場合、「必要経費」の計上には、「事業関連性」が厳しく見られる一方、法人であれば、より認められやすい傾向にあります。

例えば、個人事業で、「必要経費」として計上できる「接待交際費」は、特に厳しく見られ、不動産賃貸業などでは、接待相手が、テナントなどに限定されてしまいます。

一方、法人であれば、そこまで厳格に見られることはなく、中小企業では、年間800万円までの「接待交際費」は経費計上でき、個人事業では必要経費とできなかった支出に、節税メリットを得ることができます。

ただし、経費に計上できるからといって、本来必要ない支出をしてしまうと、無駄なCash outが生じ、「必要経費の支払増加による節税」となってしまう点に、留意が必要です。

社宅家賃

法人が、賃貸物件の契約を締結し、事業主本人は、税法で定められる最低金額のみを、法人に支払い、物件に居住することで、節税が可能となります。

家賃実額との差額は、法人側では、経費計上される一方、事業主本人側では、所得税・住民税・社会保険料が、いずれも課されません。

個人事業では、事業と紐付く家賃のみが、経費計上の対象となる一方、法人の社宅とすることで、家賃の大部分を経費とでき、節税効果が高まります。

出張旅費日当

旅費規程に基づく、日当の支払いは、法人側では、経費計上できる一方、事業主本人側では、所得税・住民税・社会保険料が、いずれも課されません。

これは、個人事業では得られないメリットで、事業主本人側で、何ら課税されることなく、日当を得る一方、法人側では、経費支払いによる、節税メリットが得られます。

全体として考えれば、何ら外部に資金が流出していないのに、節税メリットが得られるという、非常に効率が良い「永久的な節税」と言えます。

まとめ

今回は、個人事業を「法人成り」し、法人として納税することによる、2種類の節税メリットについて、語りました。

会社員の副業の規模が大きくなると、累進課税制度の中では、個人所得税の負担が、著しく増加してしまいます。法人の税率は、高所得者に対する個人所得税率より低いため、「法人成り」することで、全体の税率を引き下げることができます。さらに、所得を複数に分散することでも、節税効果が高まります。

また、法人で事業を営む場合、個人事業と比較して、経費計上の範囲が広いばかりでなく、社宅家賃や出張旅費日当を活用することで、節税策の幅も広がります。

さて、次回は、会社員の副業における「法人成り」の、デメリットについて、語りたいと思います。

<次回記事>
【社会保険料の負担】会社員の副業の法人成りの検討②【管理コストの増加】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です