【インボイス方式】会社員の副業に係る消費税③【免税事業者のCash Flowに悪影響】

前回の、税金カテゴリーの投稿では、消費税がCash Flowに与える影響や、消費税の還付方法について、学びました。

<参考記事>
【消費税の還付方法】会社員の副業に係る消費税②【不動産投資と仕入税額控除】

今回は、引き続き、消費税の話題として、2023年から導入される、「インボイス方式」について、語りたいと思います。

消費税制度の問題点に対し、「インボイス方式」でどのような対応をしようとしているか、そして、会社員の副業などの「免税事業者」に、どのような影響があるかを、検討したいと思います。

消費税制度の問題点

消費税は、「最終消費者」が負担すべき税金であり、生産・流通などの取引の各段階の事業者が、「預かった消費税額 - 支払った消費額額(仕入税額控除)」を、それぞれ申告・納付することにより、トータルで納付される税額は、「最終消費者」が負担すべき税額と、一致する仕組みとなっています。

個人事業者の場合、原則として、2年前の暦年での「課税売上高」が1,000万円を超えると、「課税事業者」となり、消費税の申告納税義務が生じます。

「課税事業者」に該当しない場合、「免税事業者」となり、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」がプラスであっても、納税の必要はなく、自らの利益、すなわち「益税」とすることができます。

例えば、「免税事業者」が「課税事業者」に売り上げ、次に、「課税事業者」が「最終消費者」に売り上げる場合、「課税事業者」は、「(最終消費者から)預かった消費税額 - (免税事業者に)支払った消費額額」を納付します。一方、「免税事業者」は、「課税事業者」から「預かった消費税額」を、「益税」としてしまうため、「最終消費者」が負担する税金の一部は、納付されることなく、「免税事業者」の利益になる点が、問題視されています。

インボイス方式の概要

従来、「課税事業者」の仕入先が、「免税事業者」であっても、「仕入税額控除」を適用できたのですが、「インボイス制度」の導入により、これが制限される予定です。

「インボイス制度」は、2023年10月からの導入が予定されており、導入後は、一定の経過措置が講じられる予定です。

従来制度

従来は、「仕入税額控除」の要件として、「帳簿保存方式」が採用されており、取引の相手方が発行した請求書等の客観的証拠書類の保存を求めていました。

「帳簿保存方式」においては、、「仕入税額控除」の適用において、仕入れ先が「免税事業者」かどうかは、問題とされませんでした。

新制度

新制度では、「インボイス方式」の導入が予定されており、「免税事業者」からの仕入れには、「仕入税額控除」の制限が課されます。

「インボイス方式」は、正確には「適格請求書等保存方式」と呼ばれ、取引の相手方が、所定の要件を記載した請求書や納品書を発行し、その保存を「仕入税額控除」の要件とする制度です。

請求書を保存するという意味では、従来の「帳簿保存方式」と同じですが、仕入れ先の「事業者登録番号」が必要となることが、従来と大きく異なる点です。

「事業者登録番号」は、「課税事業者」のみに発行される登録番号で、「免税事業者」は、この番号を得ることができず、「インボイス」を発行することができません。結果として、「免税業者」からの仕入れには、「仕入税額控除」が適用できないことになります。

適用時期

「インボイス方式」、すなわち「適格請求書等保存方式」は、2023年10月から、実施される予定です。

ただし、2019年10月から、2023年9月までの4年間は、つなぎの制度として、「区分記載請求書等保存方式」が適用されます。「区分記載請求書等保存方式」では、「事業者登録番号」は不要であるものの、消費税の軽減税率に対応するため、品目ごとに消費税率を明記する必要があります。

また、2023年10月以降、いきなり「免税事業者」からの「仕入税額控除」がゼロとなる訳ではなく、経過措置が設けられています。すなわち、「免税事業者」からの仕入れであっても、2023年10月から3年間は80%、その後の3年間は50%を、「仕入税額控除」の対象とすることができます。

インボイス方式の影響

会社員の副業などの「免税事業者」が、大企業などの「課税事業者」に、売り上げている場合、「インボイス方式」の導入により、「課税事業者」の「仕入税額控除」が、制限されることになります。

従来、「免税事業者」は、「課税事業者」から「預かった消費税額」を「益税」とすることで、「最終消費者」が負担する税金の一部は、「免税事業者」の利益となっていました。

「インボイス方式」の導入で、「課税事業者」の「仕入税額控除」を制限することにより、実質的に、「免税事業者」の「益税」を、「課税事業者」が負担することになります。

このため、「課税事業者」としては、仕入先の「免税事業者」に、取引価格の引き下げや、「課税事事業者」の選択届出などを、迫ることが想定されます。また、場合によっては、仕入先を、「課税事業者」に変更することも、想定されます。

いずれにしても、「インボイス方式」の導入は、「免税事業者」にとって、Cash Flow悪化の原因となる可能性が高く、留意が必要です。

まとめ

今回は、2023年10月から導入予定の、消費税の「インボイス方式」と、その影響について、語りました。

従前、会社員の副業などで、比較的規模が小さい「免税事業者」は、「益税」のメリットが受けられていたのですが、今後は、「インボイス方式」の導入により、「課税事業者」への売上が大半を占める場合は、Cash Flowへの悪影響が想定されます。

「インボイス方式」の導入までには、若干の時間的猶予があること、導入後も一定の経過措置が講じられることから、すぐに影響が生じる訳ではありませんが、将来Cash Flowへの悪影響の可能性について、頭の片隅に留めておく必要があります。

さて、次回からは、会社員の副業における「法人成り」について、語りたいと思います。

<次回記事>
【2種類の節税メリット】会社員の副業の法人成りの検討①【税率差と累進課税】

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