【消費税の還付方法】会社員の副業に係る消費税②【不動産投資と仕入税額控除】
前回の、税金カテゴリーの投稿では、会社員の副業でも、規模が一定程度大きくなると、避けて通ることのできない、「消費税」の申告納税義務について、学びました。
<参考記事>
【課税売上高1,000万円】会社員の副業に係る消費税①【簡易課税制度の有利不利】
今回は、消費税がCash Flowに与える影響や、消費税の還付方法について、語りたいと思います。
消費税は、基本的には、最終消費者が負担すべき税金で、生産・流通などの取引の各段階の事業者が、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」を、それぞれ申告・納付することで、トータルで納付される税額は、最終的な消費者が負担すべき税額と、一致する仕組みとなっています。
消費税がCash Flowに与える影響
消費税の仕組み上、「免税事業者」は「預かった消費税額 - 支払った消費額額」がプラスであれば、Cash Flowに好影響となり、「課税事業者」は、Cash Flowトータルでの影響は、ゼロとなるはずです。
しかしながら、「支払った消費税額」が多額になる場合や、「課税売上割合」が低い場合には、Cash Flowにネガティブな影響が生じる可能性もあるため、留意が必要です
免税事業者
会社員の副業の「課税売上高」が1,000万円以下で、「免税事業者」となる場合、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」がプラスであれば、納税の必要はなく、自らの利益とすることができます。
この利益には、所得税や住民税が課されるため、これらの税金のCash Flowは考慮する必要があるものの、「消費税」のみに着目すれば、受け取った際に、Cash-inがあり、支払った際に、Cash-out があるだけになります。
ただし、設備投資などがあり、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」がマイナスとなるような場合、「消費税」がネットでCash-outとなってしまうため、あえて「課税事業者」となり、還付申請するとの選択もあり、これにつては後述します。
課税事業者
会社員の副業の「課税売上高」が1,000万円を超え、「課税事業者」となる場合、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」を申告納税することになります。
消費税の申告・納付期限は、個人事業主の場合は翌年3月31日ですが、前年の消費税の税額が一定金額を超える場合、複数回に分けて、中間申告・納付が必要となります。
冒頭で説明したように、消費税は、基本的には、最終消費者が負担すべき税額を、各段階の事業者が、分割して申告・納付しているに過ぎないため、「消費税」のみに着目すれば、ネット預かり額を、のちに納付するだけで、Cash Flowトータルの影響はゼロとなります。
ただし、事業資金と消費税の預かり金が、別管理されていない場合、消費税の納付期限に、追加的なCash-outが生じる感覚となってしまいますので、あらかじめ、消費税の納付スケジュールを把握しておくことが重要です。
また、「課税売上割合」が低い場合、「支払った消費税額」の控除が限定され、消費税の支払い時にCash-outしたままとなるとの問題もあり、これについては後述します。
免税事業者の還付方法
「免税事業者」であっても、設備投資などにより、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」がマイナスとなる場合、あえて、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出し、「課税事業者」となることで、消費税の還付を受けることができます。
その場合、原則として、適用する課税期間の「開始の日の前日」までに、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要がありますが、「消費税課税期間特例選択(変更)届出書」を提出することで、年の途中から「課税事業者」となる方法もあります。
ただし、ひとたび「課税事業者」を選択すると、「免税事業者」に戻るためには、様々な要件を充足する必要があり、ハードルが高いことから、事前に専門家である税理士に相談するなど、慎重な検討が必要です。
仕入税額控除の制限
「課税事業者」は、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」を申告・納付する必要がありますが、「支払った消費額額」を控除することを、「仕入税額控除」と言います。
「仕入税額控除」の金額には、一定の制限が課されるとの、特徴があります。つまり、「課税売上高」と「非課税売上高」の合計に占める、「課税売上高」の割合が、95%以上であれば、全額「仕入税額控除」することが可能なものの、95%未満の場合は、「課税売上高」に対応する部分のみが、控除可能となります。
この「課税売上高」に対応する部分の計算には、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の2つの方法があります。また、前回説明したように、2年前の暦年の「課税売上高」が5,000万円以下の場合は、「簡易課税制度」を適用し、簡易的な計算をすることも可能となりますので、それぞれの方法の有利不利を判断する必要があります。
不動産賃貸事業と消費税
不動産投資にとって、消費税の負担は、頭の痛い問題です。
家賃収入は、政策的に「非課税売上」とされる一方、建物の購入費用やリフォーム費用には、消費税が課されるため、「預かった消費税額 - 支払った消費額額」が、大きなマイナスとなります。そのため、このマイナス相当額の還付を受けるため、過去からいろいろなスキームが検討されてきました。
収入の大部分は、「非課税売上高」となることから、基本的には、「課税売上高」が1,000万円以下の「免税事業者」となってしまうため、あえて「課税事業者」を選択することを検討します。ところが、不動産賃貸業の場合、「課税売上割合」が著しく低く、「仕入税額控除」がほとんど活用できず、還付が受けられないとの結果になります。
この点、過去には、自動販売機を設置し、「課税売上高」を作り出すことで、物件購入年度の「課税売上割合」を恣意的に高め、還付を受けるスキームが多用されていました。現在は、消費税法の改正で、3年の間に「課税売上高割合」が大きく減少する場合は、減少分に相当する還付額を返還するよう定められ、このスキームの活用は困難になっています。
近年では、金売買を繰り返すことで、多額な「課税売上高」を作り出し、「課税売上割合」を継続的に高め、消費税の還付を受けるスキームが活用されています。ただし、このスキームについても、国税庁から、「事業者の事業実態から乖離」する場合は、「課税売上割合」の計算から除外するとの「意見」が出ており、納税者と当局の、いたちごっこが続いています。
まとめ
今回は、消費税がCash Flowに与える影響や、消費税の還付方法について、語りました。
本来、消費税は、最終消費者が負担すべき税額を、各段階の事業者が、分割して申告・納付するに過ぎないため、理論的には、Cash Flowトータルの影響はゼロとなるはずです。
ところが、「免税事業者」に、多額の消費税の支払いがあったり、「課税事業者」でも「課税売上割合」が低い場合には、最終的に、事業者側で消費税を負担せざるを得なくなるため、様々な、消費税の還付手法が検討されています。
次回も、引き続き、消費税の話題として、2023年から導入される、インボイス方式について、語りたいと思います。