【共用廊下とアルコープ】マンション購入時の確認ポイント④【用途地域と日照】

前回は、マンションの「住み心地」について、確認すべきポイントとして、「床」や「壁」「ベランダ」が、主に、防音性能に与える影響について、語りました。

<参考記事>
【スラブ厚と防音性能】マンション購入時の確認ポイント③【ベランダ隔て板とプライバシー】

今回は、共用廊下やアルコープ、地下・半地下住戸の、「住み心地」への影響について、述べたいと思います。

また、「住み心地」の重要な要素となる「日当たり」について、「用途地域」の観点から、どのような影響があるか、考えたいと思います。

共用廊下とアルコープの影響

マンションの共用廊下には、「内廊下」と「外廊下」の二つの方式があり、「内廊下」の方が、より高級な方式となります。

また、いずれの廊下を採用する場合でも、住戸の玄関廻りの「アルコープ」は、重要なチェックポイントとなります。

内廊下・外廊下

マンションの共用廊下が、建物内部にあることを「内廊下」と呼び、建物外部で外気と接していることを「外廊下」と呼びます。

オフィスビルや商業ビルのように、建物内部に「内廊下」を作るのは、コスト高の原因ともなるため、大部分のマンションでは「外廊下」が採用されており、「内廊下」となるのは、一部の高級マンションに限られます。

「内廊下」の場合、廊下側から採光が取れないため、「スパン」を広くとり、ベランダ側から「居室」に採光を取り込む、コストのかかる「ランドプラン」となることから、販売価格の上昇に加え、空調コストにより「管理費」も増加します。

<参考記事>【ワイドスパンとアウトフレーム】マンション購入時の確認ポイント②【下がり天井に注意】

「内廊下」は、コスト高と引き換えに、住戸の廊下側の窓がないことで、静寂性・プライバシー性が向上し、建物内での移動でも、天候に左右されず、快適性が増すとのメリットがあります。

ただし、共用廊下が、建物内の閉じた空間に存在するため、住戸内部の声や、料理のにおいなどが、廊下に漏れてしまうケースもあるため、実際の物件を見学する際には、状況を確認することをおすすめします。

アルコープ

「アルコープ」とは、共用廊下から、各住戸への玄関に向けて、少し窪ませた部分のことを言います。

アルコープが小さすぎると、住戸内部から玄関ドアを開けたとき、共用廊下にいる他の居住者と、ぶつかってしまう可能性があります。また、アルコープにより、共用廊下から、少し奥まった空間が確保できることで、プライバシー性が向上するとのメリットもあります。

デベロッパーの視点からは、直接の販売対象とならない、アルコープを広くとると、コスト高・販売価格高の要因になってしまうため、特に、建築費用の上昇局面では、柱のアウトフレームなどと同様、アルコープを極力削ろうとする傾向にあります。

「内廊下」「外廊下」いずれのマンションであっても、少なくとも、玄関ドアが共用廊下に、はみ出さない程度の「アルコープ」が確保されていると、「住み心地」が向上しますので、図面の確認や、実際の物件の見学の際には、玄関前のスペースにも、注目してください。

地下・半地下住戸の影響

デベロッパーは、土地の高さ制限がある中で、土地からの利益を最大化するため、地下住戸や半地下住戸を作ることがあります。

建築基準法では、天井高の1/3以上がグランドレベルより下にある部屋を、「地下室」と定義します。また、法律上は、「地下室」とならずとも、1階部分を、グランドレベルからは、少し掘り下げて設計することで、土地を有効活用しようとするマンションもあります。

これらの、「地下」や「半地下」の住戸は、日照面で不利になるばかりでなく、地中に接することで、湿気が高くなる傾向があります。また、グランドレベルより下に来ることで、ゲリラ豪雨などによる、浸水の可能性も高まります。浸水対策としては、排水溝などが、しっかり設計されてはいるものの、木の葉が詰まって、大雨の時に、うまく排水できないとの事例も聞きます。

「地下」や「半地下」の住戸には、広いドライエリアがあったり、子供の足音を気にしなくても良かったりと、魅力的な部分もある反面、「住み心地」にネガティブな要素もあります。そのため、このような住戸を検討する場合、ネガティブな要素を、本当に納得できるのか、熟考することが重要です。

日照の影響

日本人の、南向き信仰は、非常に根強く、「日当たり」は「住み心地」の重要な要素と考える人が多いです。

特に、新築マンションの、「日当たり」の検討においては、売主の作成する「日照シミュレーション」が、参考になります。また、現在の日照条件が、将来も継続するかとの観点では、南側土地の「用途地域」を確認することが、重要です。

日照シミュレーション

新築マンションのモデルルームに行くと、「日照シミュレーション」を見ることができ、時間の経過とともに、周辺建物などによる影が、どのように推移するかを見ることができます。

この「日照シミュレーション」は、主要な季節ごとに作成されることが一般的ですが、まずは、太陽が一番低くなる「冬至」の状況を確認することを、おすすめします。

マンション住戸の「坪単価」の決定には、「日照条件」も加味されていますので、「坪単価」と「日照条件」の関係が、納得できるバランスになっているか、検討してください。

用途地域の確認

上記の「日照シミュレーション」は、あくまで、現時点での状況に基づくものですが、将来、周辺建物の新築や建替えにより、日照条件が変化する可能性があります。

将来の変化を予測するうえで、参考になるのが、マンション周辺土地の「用途地域」です。「用途地域」とは、その土地に建設できる建物を、その地域の立地に応じた用途に制限するもので、全部で12種類の「用途地域」があります。「用途地域」に応じて、建てられる建物の、大きさや高さも、制限されます。

マンションの場合、「住居専用地域」や「住居地域」「商業地域」などに建設されることが多いのですが、例えば、「住居地域」に建つマンションの南側の土地が、「商業地域」となっている場合、現状は、小さな建物しか建っていなくとも、将来的には、大きな建物が建ち、日照や眺望が阻害される可能性があります。

そのため、検討するマンションの周辺土地の、「用途地域」を確認することが重要です。また、将来の状況変化が、住戸の「坪単価」に織り込まれていることも多いため、例えば、同じ方角の住戸でも、一定の階数を境に、大きく「坪単価」が歪んでいるときには、その理由を、販売員に質問することを、おすすめします。

<参考記事>【坪単価による資産価値検討】マンション購入の留意点②【近隣物件の相場と比較】

まとめ

今回は、共用廊下やアルコープ、地下・半地下住戸の、「住み心地」への影響や、「用途地域」の「日当たり」への影響について、語りました。

これまで、4回にわたり、マンションの「住み心地」についての、確認ポイントを述べてきましたが、マンションを検討する際には、全ての理想を満たすマンションは存在しないことも、同時に認識する必要があります。

そのため、マンションを探すうえでは、希望事項の優先順位を、明確にすることが重要です。この優先順位は、人によって異なるのが当然で、ある人にとっては「内廊下」が譲れない条件かもしれませんし、他の人にとっては、「日当たり」が最優先かもしれません。

ただし、マンションの「資産価値」との観点では、主観的な「住み心地」よりも、客観的な「立地」が最も重要な要素で、その「立地」における「適正価格」で購入できるかが、「資産価値」を維持できるかの、分かれ道になるとの点は、常に、頭に留めておいてください。

さて、次回は、僕が、マンションを契約してから体験した、「資産価値」と「住み心地」の悩みについて、語りたいと思います。

<次回記事>
【手付金放棄で契約解除】マンション購入契約締結後の悩み【資産価値と住み心地のバランス】

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