【坪単価による資産価値検討】マンション購入の留意点②【近隣物件の相場と比較】

前回は、僕が日本でマンションを購入した事例を紹介するとともに、賃貸需要や近隣賃貸相場の観点から、立地の優劣と物件の適正価格について、語りました。

<参考記事>
【ダメな失敗事例】マンション購入の留意点①【資産価値ある物件を適正価格で購入するコツ】

今回は、マンションの「資産価値」を測る際の尺度となる、「坪単価」とその歪みについて、述べたいと思います。

マンション購入を検討する際、多くの人は、その物件の販売価格を見て、高い・安いを判断し、自らの手持ち資金や収入と比較することで、購入可能か検討します。

一方、「資産価値」のあるマンションを購入するとの観点からは、近隣物件の相場と、正確に比較検討する必要があり、Gross販売価格のみならず、「坪単価」の尺度を用いて、分析することが、重要です。

坪単価

「坪単価」とは、そのマンションが、「1坪あたり何万円か」との概念です。

1坪は約3.3㎡となり、逆に「平米」での表記を「坪」に換算するときは、0.3025をかけて算出します。

坪単価のイメージ

一般的に、マンションの広さは、「平米」で表記されているため、「坪」への換算替えが必要になります。「平米単価約100万円だと坪単価約330万円」と覚えておくと、感覚的につかみやすいと思います。

つまり、「70㎡の3LDKが7,000万円であれば、坪単価は約330万円」です。もし、6,000万円であれば坪単価約280万円、8,000万円であれば坪単価約380万円となります。

僕のマンションの例を出すと、僕が購入した数年前は、坪単価290万円ほどでしたが、その後の建築費高騰により、同一町内の新築マンションは、坪単価330万円ほどまで上昇しました。

物件をリサーチする際には、そのエリアでの、現時点の近隣物件の坪単価のみならず、過去から現在の坪単価推移を、相場観として持っておくことが重要です。

物件の広さによる影響

キッチンやバス・トイレなどは、物件の大小にかかわらず必要となるため、3LDKと1LDKのマンションを比較すると、1LDKの方が、「坪単価」は上昇する傾向にあります。

そのため、「坪単価」の比較は、大きさの極端に異なる部屋同士には適しておらず、似た大きさ同士の比較で、より効果を発揮します。

計測方法による影響

広告等で使用されるマンションの広さは、一般的に、「壁芯」と呼ばれる方式で表記されています。

隣室との戸境壁の中心線から測定した広さを「壁芯面積」と呼び、部屋の中に柱が通っている場合、その柱の面積も、「壁芯面積」に含まれます。また、部屋の外にある、トランクルームなどが、広告表記の面積に含まれていることもあります。

そのため、マンションの間取りを見て、部屋の中に柱が存在する場合や、トランクルームを算入している場合は、「坪単価」としては、実態より安く見えてしまう点に、留意が必要です。

坪単価の比較検討

購入検討物件の「坪単価」を、様々な角度で、近隣物件の「坪単価」と比較することで、客観的に事実を分析することが可能となり、値付けの妥当性を検証することができます。

近隣物件相場との比較

新築・中古いずれをを購入する場合でも、類似の近隣物件の坪単価相場を理解しておくことで、購入検討物件が、現状相場に対して、割高か割安かを判断することが可能となります。

まったく同じ物件は存在しないため、物件固有の事情により「坪単価」に差がでることは、自然なことです。その差が、例えば、駅距離に起因するのか、物件内のポジションの優劣に起因するのかなど、合理的な理由があるかを、分析することが重要です。

過去分譲相場との比較

特に、新築物件を検討する場合、近隣物件の、新築分譲時の「坪単価」は、重要なデータです。不動産情報サイトIESHIL(イエシル)などで、無料で、近隣物件の新築分譲価格を見ることができ、そこから「坪単価」を算出することができます。

築年数が数年程度しか違わない近隣物件は、中古マーケットにおける、潜在的なライバルになります。ライバルが、どの様な値付けをしてくるかは、購入時の「坪単価」にも影響されるため、購入検討物件との比較を行っておくことが重要です。

ポイントは、価格上昇局面で分譲される新築マンションの場合、ライバルの分譲時価格と比べ、Gross販売価格は、若干高い程度であっても、「坪単価」にすると、大幅に高くなるケースがあることです。売主がGross販売価格の極端な上昇を抑えるため、占有面積を絞って分譲するようなケースで、3LDKだと、ライバル物件は75㎡の一方、購入検討物件は68㎡となるような場合です。

中古物件の購入検討者は、より広い方を好むと考えられるため、「坪単価」が大幅に高くなった物件を購入してしまうと、「資産価値」が毀損する可能性が高まります。

中古物件相場との比較

近隣の中古物件相場と比較する時も、「坪単価」の活用が有益です。

新築物件を購入する場合、例えば、築10年の近隣中古物件の売買実績額を、10年後のマンション価値と見立て、10年後のローン残高予想と比較し、購入者の「純資産」がどのように変化するか予想します。

中古物件を購入する場合も同様で、例えば、築10年の物件を検討しているのであれば、近隣の築20年の物件の「坪単価」を参考に、購入から10年後の「純資産」の変化を予想します。

この際、近隣中古物件の売買実績額の「坪単価」を基に、検討物件の将来価格を予想することで、より正確な分析を行うことができます。上述の例のように、検討物件の専有面積が絞られている場合、想像以上に、将来マンション価値が低く見積もられるケースもあり、留意が必要です。

同一物件内での比較

最後に、特に新築物件の場合、物件内での選択肢が多数あるため、物件内のどの部屋を選ぶかを決める際にも、「坪単価」がひとつの目安になります。

物件の価格表を基に、各部屋の「坪単価」を算出すると、部屋の方角や階数により、売主がどのように、販売価格に差を付けているかが、一目で分かります。売主は、マンション全体で一定の利益を確保できるよう、売りやすい部屋には高めの値付けを、売りにくい部屋には低めの値付けをしており、「坪単価」の歪みには、全て理由があります。

例えば、同じ方角であっても、特定の階数から、「坪単価」に大きな差が付けられているケースがあります。この場合、前面建物の影響で、特定の階数までは日陰になりやすい、または、前面土地に建設予定があり、視界が塞がれる可能性がある、などの理由が想定されます。

マンション価値の大部分は「立地」に依拠するため、「資産価値」のみにフォーカスすれば、「坪単価」の低い部屋を買うとの戦略もあります。そのため、俗に「パンダ部屋」と呼ばれる、客寄せのため極端に「坪単価」を下げた部屋には、投資家が殺到し、高倍率の抽選になることもあります。

一方、実需でマンション購入する場合、住み心地も重要な要素となりますので、「坪単価」の歪みを理解したうえで、バランスの取れた部屋を選択することを、おすすめします。

まとめ

マンションの定量的な「資産価値」を分析するには、Gross販売価格のみならず、「坪単価」をベースに、様々な角度から、比較検討することが重要です。

これは、前回紹介した、近隣物件の賃借料から、物件の適正価格を見積もる場合も同様で、近隣の「坪あたりの賃料」の相場をもとに、検討物件の賃借料を予想します。

ただし、資産価値にフォーカスし過ぎて、「坪単価」を最優先に物件を選択してしまうと、住み心地に問題ある部屋を購入してしまう可能性もあるため、バランスが重要になります。

次回は、デベロッパーや建設会社などの、マンションにまつわる登場人物について、語りたいと思います。

<次回記事>
【頂点に君臨するデベロッパー】マンション分譲事業の登場人物たち【中古でも重要なブランドネーム】

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