【ワイドスパンとアウトフレーム】マンション購入時の確認ポイント②【下がり天井に注意】

前回は、マンションを購入する際に、確認すべきポイントとして、主にマンション全体のランドプランの観点から、「住み心地」への影響を、語りました。

<参考記事>
【図面から生活導線をイメージ】マンション購入時の確認ポイント①【エレベーターは13人乗りが快適】

今回は、より個々の住戸にフォーカスをあて、建物や住戸の構造が、「住み心地」へ与える影響について、検討したいと思います。

新築マンションの場合、モデルルームで、図面を貰うことができ、その中には、建物全体のみならず、各部屋の図面も含まれます。また、中古マンションを検討する際も、新築分譲時の、対象住戸の図面のコピーを貰えることが多いです。

これらの図面には、「住み心地」を検討する上で、重要な情報が、数多く記載されています。

スパンの影響

まず、最初に、マンション各住戸の、間口の大きさである、「スパン」です。

マンションは、一軒家と異なり、隣の住戸と壁で繋がっており、外部への開口部が限定的になるため、「スパン」の確保が重要になります。

日当たり・採光・通風とスパン

マンションの各住戸の「住み心地」を検討する際、明るい部屋が、より好まれる傾向にあり、「日当たり」や「採光」は、重要な要素となります。「スパン」をどれだけ確保できるかにより、「日当たり」や「採光」の程度も、左右されます。

「日当たり」とは、文字通り、太陽からの日差しを意味する一方、「採光」は、外部から明るさを取り入れることを意味し、必ずしも、南向きとは限りません。

例えば、タワーマンションの、北向き住戸では、「日当たり」は期待できないものの、「スパン」が確保できていれば、「採光」により、十分明るい部屋となる可能性があります。また、「通風」の観点からも、「スパン」が確保できることで、風の通り道を、作りやすくなります。

ワイドスパン・ショートスパン

間口の広い住戸は「ワイドスパン」、逆に狭い住戸は「ショートスパン」と呼ばれます。

70㎡程度の3LDKの場合、通常、6m台の「スパン」が多いものの、7mや8mを超えてくると、「ワイドスパン」と呼ばれ、より明るく「住み心地」の良い部屋が期待できます。

デベロッパーは、ランドプランを決定する際、マンションの限られた開口部を、いくつの部屋で分けるのか検討します。開口部を、より沢山の住戸で分け合うことで、より多くの住戸を詰め込むことができ、反対に、少ない住戸で分け合うと、計画できる住戸数も減少します。

利益を最大化できるよう、土地の形状や、販売価格・総戸数との関係を見ながら、ランドプランを最適化しますが、一般的には、間口の広い「ワイドスパン」は、コスト高の原因となり、販売価格も上昇する傾向にあります。

3LDK ・2SLDK

マンションにおいて、各部屋が居室と認められるためには、一定の「採光」があることが条件となります。

「3LDK」と同様の間取りにもかかわらず、「2SLDK」と表記される物件があります。これは、部屋の一つで、「採光」が足りず、Storage(倉庫)として表記せざるを得ないためです。「採光」が足りない理由の一つには、「ショートスパン」で開口部が限定的となり、全ての部屋に十分な「採光」を与えることができないことがあります。

Storageの部屋は、「採光」が期待できない部屋となりますので、特に、昼間の「住み心地」を重視する場合は、留意が必要です。

柱の位置の影響

マンションは「ラーメン構造」といわれる、柱と梁を組み合わせた構造となっており、それらの各住戸への影響も、「住み心地」と関係します。

柱については、住戸内への食い込みが少ないほうが、部屋が整形に近づき、「住み心地」が向上します。

アウトフレーム・インフレーム

住戸の4角にある柱が、住戸外に出ていることを「アウトフレーム」と言い、逆に住戸内に食い込んでいることを「インフレーム」と言います。

「アウトフレーム」とすることで、各部屋の形が、より整形に近づき、家具などの配置がしやすくなります。一方、デベロッパーの、土地の有効活用の観点からは、販売対象とならないスペースが生じることで、コスト高・販売価格高の原因となってしまいます。

「アウトフレーム」と表記されていても、中途半端な「アウトフレーム」の場合や、ベランダ側または廊下側のいずれか一方のみが「アウトフレーム」となっている場合もあり、図面で確認することが重要です。

占有面積と柱

マンション広告で使用される「専有面積」は、隣室との戸境壁の中心線から測定した「壁芯面積」となっており、「アウトフレーム」と「インフレーム」では、同じ平米数の表記でも、実際に使用できる面積に、違いが生じます。

また、タワーマンションなど、沢山の柱が必要な建物では、住戸の中に、柱が通っていることもあり、「専有面積」と、実際に使用できる面積に、違いが生じる原因となります。

そのため、「専有面記」が、実態に近いものであるか確かめるとの観点でも、図面での確認が必要です。

天井の影響

マンション購入検討者が、見落としがちなポイントですが、三次元の視点から、天井についても、「住み心地」に影響を与えるポイントとして、確認が必要です。

天井の、高さに加え、梁による形状への影響についても、部屋の図面から読み取り、検討する必要があります。

天井高

天井高は、高いほど、開放感が向上し、「住み心地」に好影響があると言われていますので、図面から、天井高を読み取ってください。

最近のマンションは、天井高2450mmから2550mmほどの物件が多く、2600mm以上あれば、かなり高い部類に入ります。

天井高も、デベロッパーによる販売戦略の影響を受け、土地の高さ規制がある中で、天井高を高くすると、階数が減り、販売可能住戸も減ってしまうとの関係にあります。よく語られる例として、45メートルの高さ制限のある地区での、15階建てと14階建てのマンションの比較があり、14階建ての方が、階高が高く、天井高も高くできるものの、マンション全体の住戸数は、減少することになります。

天井の形状

天井の形状は、開放感に直結することもあり、天井高2450mmでフラットな方が、天井高2600mmでデコボコしているより、快適に感じることがあります。

通常、天井は、一定程度デコボコしているのが普通であり、柱と柱の間の、梁で結ばれている部分は、天井が若干低くなる「下がり天井」となります。部屋の4角に柱がある場合、ベランダ側と共用廊下側に、「下がり天井」が生じることとなり、その高さが、2000mmを下回ってくると、少し圧迫感が出てきます。また、柱の多い建物では、部屋の内部にも「下がり天井」が生じる場合があり、それらは「ギロチン天井」とも言われ、圧迫感が増してしまいます。

窓際の、過度な「下がり天井」は、開放感のみならず、「日当たり」や「採光」の観点でも、不利な影響が生じます。この点、「逆梁工法」という、梁を天井ではなく、床にもってくることで、窓際の「下がり天井」を解消し、フラットにする工法のマンションもあります。

部屋の図面をよく見ると、通常部分の天井高に加え、「下がり天井」の部分の高さも、記載されていますので、それらの数値から、イメージを膨らませることが大切です。

まとめ

今回は、「スパン」「柱」「天井」などの、建物や住戸の構造が、「住み心地」へ与える影響について、語りました。

建物や住戸の構造に由来する「住み心地」は、リフォームなどで変更できない部分となりますので、事前に、図面を見て、しっかり把握しておくことが重要です。

「天井」の高さや形状などは、最初は、なかなかイメージし辛いですが、いろいろな部屋の図面を見比べていると、だんだんと感覚が養われ、モデルルームに行っても、まずは「天井」に目が行ってしまうようになります。

次回は、引き続き、建物や住戸の構造が、「住み心地」へ与える影響として、「床」の構造などについて、語りたいと思います。

<次回記事>
【スラブ厚と防音性能】マンション購入時の確認ポイント③【ベランダ隔て板とプライバシー】

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