【海外赴任後】不動産売却に係る日本の税金【特別控除は3年縛りあり】

前回までで、海外赴任に伴い、居住用不動産を売却または賃貸する場合の、日本の税務について学びました。今回は、赴任後に、日本の不動産を売却するケースを検討したいと思います。

<参考記事>
【海外駐在時】不動産に関する日本の税金①【売却と特別控除】
【海外駐在時】不動産に関する日本の税金②【留守宅の賃貸】

例えば、赴任時は、留守宅を賃貸に出していたものの、途中で入居者が退去した場合、賃貸を再募集するか、売却するかの判断が必要となります。特に、不動産市況の上昇局面では、売却を考える人も多いかと思います。

駐在員として、海外にいると、日本の不動産を売買するには、司法書士への依頼や、様々な書類が必要となり、手続きが若干煩雑になりますが、ここでは、課税関係に限って、解説したいと思います。

まず、売却益が出る場合ですが、「非居住者」による、日本の不動産売買に伴う「譲渡所得」は、国内源泉所得となり、納税管理人を通して、確定申告が必要となります。

「非居住者」であっても、長期・短期の区分により税率が異なることに加え、3,000万円の特別控除も、「居住者」と同様、活用することができます。この特別控除は、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」の売却が対象となり、売却までの間は、空家でも賃貸でも問題ないとされています。従って、日本に不動産を残してきた駐在員にとっては、この「3年」というのが、非常に重要な数字になります。

米国の税制は、別の機会に解説しますが、「過去5年間のうち合計2年以上」主たる住居として居住していた場合には、夫婦合算で、売却益50万ドルまでに対する税金が免除されます。

そのため、駐在員が、赴任以降に、日本の留守宅を売却する場合、日本の「3年」、米国の「過去5年間のうち合計2年以上」の、両方の条件を満たすことで、税制上、非常に有利な取り扱いとなる旨、頭の片隅に入れておくと良いでしょう。

<参考記事>
【赴任後3年内の売却でメリット最大化】米国駐在員の留守宅売却に係るアメリカ税金【最大50万ドルの非課税枠】

なお、売却時の、日本における留意点は、源泉徴収です。「非居住者」による不動産売買では、その購入者は、売却代金支払いの際、支払金額の10.21%相当額を、源泉徴収する必要があります。ただし、個人が居住用に購入し、売買代金が1億円以下の場合は、その個人は源泉徴収義務を負わないため、不動産売買契約締結時には、源泉徴収義務の確認が大切です。なお、源泉徴収される場合、確定申告により、税金の過不足を精算することになります。

最後に、売却損が出る場合ですが、譲渡損失は「分離課税」となり、「居住者」のように他の所得との損益通算の特例に該当することも困難なため、他に譲渡利益がある場合に限り、通算可能となります。通算する譲渡利益がないケースであっても、上述の通り、売却代金に対し源泉徴収されている場合、確定申告により、源泉徴収済の税額を取り戻すことができます。

さて、次回は、少し趣向を変えて、駐在員と、日本の消費税の関係について、語りたいと思います。

<次回記事>
【一時帰国】駐在員と日本の消費税の免税【スタンプ付きパスポートを忘れずに】

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