【高い累進税率による課税】米国駐在員の留守宅賃貸に係るアメリカ税金【一時帰国費用の取り扱い・損失の相殺制限】

前回は、米国の個人所得税申告における、「米国源泉所得」の考え方について、学びました。

<参考記事>
【米国駐在員】アメリカ税金申告における米国源泉所得の考え方【賞与の支給対象期間】

今回は、駐在員が、日本の留守宅を賃貸し、不動産所得が生じる場合の、米国での課税関係について、語りたいと思います。

国外源泉所得

米国の税制上、日本で得る不動産所得は、「米国源泉所得」に該当せず、「国外源泉所得」となります。

そのため、米国離着任の年に、「二重身分」や「通年非居住者」となる場合、「非居住者」としての申告には、留守宅の不動産所得は含まれません。

二重身分の通年居住者選択

また、「二重身分」となる場合の「通年居住者」選択の有利不利判断などでは、前回説明した賞与に加え、不動産所得の影響も検討することが重要です。

例えば、帰任の年に「二重身分」となり、帰任後も賃貸が継続する場合、「通年居住者」選択による夫婦合算申告の税率引き下げメリットと、「全世界所得」として帰任後の不動産所得が課税されるデメリットを、比較衡量する必要があります。

<参考記事>
【米国駐在員】アメリカにおける居住者・非居住者の考え方【二重身分の有利・不利検討】

居住者としての申告

一方、「通年居住者」や「二重身分」の、「居住者」としての申告では、日本での不動産所得も「全世界所得」として課税されます。

不動産所得は、「家賃収入」から「必要経費」を控除して計算しますが、「必要経費」には、管理費・修繕積立金、固定資産税、リロケーション会社手数料、住宅ローン利子などに加え、減価償却費が含まれます。

駐在員の給与には、様々な手当が加算されており、高い累進税率が適用されていることから、On topで不動産所得が加わることにより、予想よりも高額の納税が必要となることがあります。

僕の知り合いの中には、米国での不動産所得課税を失念しており、申告書を見て慌てた人がいましたので、あらかじめ、納税額をイメージしておくことをお勧めします。

不動産所得の留意点

日本の留守宅に係る不動産所得の、米国での申告の留意点について、何点か記載したいと思います。

必要経費の計上タイミング

最初は、特に初年度申告に関係しますが、「必要経費」を、どのタイミングから計上できるか、との論点になります。

この点、「マーケットに出した時点」とされており、賃貸募集開始から、実際の入居まで、一定程度タイムラグがある中で、管理費・修繕積立金、固定資産税、利息、減価償却などの「必要経費」は、募集開始時点から、費用計上できます。

一時帰国費用等の取り扱い

次に、「必要経費」の中で、悩ましいのは、一時帰国費用等の取り扱いです。

旅行費用などを、可能な限り、不動産所得と紐付けることができれば、節税効果が大きいため、一時帰国の前に、あらかじめ、専門家と確認しておくことをお勧めします。

赤字の取り扱い

また、リロケーション会社への成約手数料や、減価償却費などで、不動産所得が赤字になる場合の、取り扱いです。

留守宅賃貸から生じる損失は、米国税制上、”Passive Activity Loss” とされ、原則、他の所得と相殺することはできません。

ただし、制限された損失は、翌年に繰り越し、翌年の不動産所得と相殺することが可能ですので、赤字であっても、上述の「必要経費」の判断も含め、正確な情報に基づき、申告書作成することが重要です。

外国税額控除の仕組み

最後に、外国税額控除の仕組みについてです。リロケーション会社など、法人と賃貸借契約を締結すると、日本で賃貸料の20.42%を源泉徴収されます。

一方、外国税額控除の対象は、あくまで、最終税額であり、日本の所得が限定的であれば、確定申告に基づく最終税額は、大幅に少なくなり、その実額又は見積額が、外国税額控除に反映されます。

そのため、海外赴任中、納税管理人を通じた確定申告を行わず、帰国後、還付請求する場合、一定期間、日米で二重課税が生じることとなります。

<参考記事>
【海外駐在時】不動産に関する日本の税金②【留守宅の賃貸】

さて、次回は、米国に赴任後、日本の留守宅を売却する場合の、米国での課税関係について、語りたいと思います。

<次回記事>
【赴任後3年内の売却でメリット最大化】米国駐在員の留守宅売却に係るアメリカ税金【最大50万ドルの非課税枠】

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