【リファーラル収入は申告要】米国駐在員の各種所得に係るアメリカ税金【譲渡益・譲渡損の課税関係】
前回の税金カテゴリーの投稿では、日本の留守宅を売却する場合の、米国での課税関係について、学びました。
<参考記事>【赴任後3年内の売却でメリット最大化】米国駐在員の留守宅売却に係るアメリカ税金【最大50万ドルの非課税枠】
今回は、駐在員の米国での個人所得税申告書「Form1040」における、各種所得の留意点について、語りたいと思います。
繰り返しになりますが、米国の課税関係の検討で重要な要素は、「居住者」「非居住者」いずれの申告となるか、所得が「米国源泉所得」「国外源泉所得」のいずれに該当するかです。
「居住者」であれば「全世界所得」が米国で課税対象となり、「非居住者」であれば「米国源泉所得」のみが対象となります。
<参考記事>【米国駐在員】アメリカにおける居住者・非居住者の考え方【二重身分の有利・不利検討】
所得の種類ごとに、上記要素に加え、適用される税率や、損失の利用制限の観点から、留意点を記載したいと思います。
給与所得
まず、「給与所得」ですが、基本給や賞与のみならず、海外赴任手当や住宅手当、教育手当などの各種手当が含まれます。手当を含めた「Net手取額」が定められている場合、Gross-up計算により、申告対象の「Gross支給額」を算定する必要があります。
「居住者」「非居住者」いずれの場合も、「全世界所得」又は「米国源泉所得」を対象に、他の所得と合算し、累進税率にて課税されます。
<参考記事>【Net手取額】米国駐在員のアメリカにおける税金申告方法【Gross支給額】
利子所得・配当所得
次に、「利子所得」や「配当所得」ですが、「居住者」は「全世界所得」を対象に、他の所得と合算し、累進税率にて課税されます。ただし、従業員持株会で保有する株式の配当は、「適格配当」として、軽減税率が適用されます。
一方、「非居住者」の場合、「米国源泉所得」の利子や配当のみが課税対象となるうえ、日米租税条約に基づき、軽減税率が適用されます。
不動産賃貸所得
「不動産賃貸所得」について、「居住者」は「全世界所得」を対象に、他の所得と合算し、累進税率にて課税されます。「給与所得」が高額になりがちな駐在員にとって、留守宅の「賃貸所得」を、必要経費の適切な計上などにより、圧縮することで、税負担の軽減につながります。
なお、賃貸所得が損失になる場合、原則として、他の所得と相殺できず、翌年への繰越となります。
一方、「非居住者」の場合は、米国所在物件からの所得のみが、申告対象となる点が、「居住者」と異なります。
<参考記事>【高い累進税率による課税】米国駐在員の留守宅賃貸に係るアメリカ税金【一時帰国費用の取り扱い・損失の相殺制限】
譲渡所得
また、「譲渡所得」については、「居住者」は「全世界所得」を対象に、原則として、他の所得と合算し、累進税率にて課税されます。
ただし、1年超保有の「長期キャピタルゲイン」には、15%(高額所得者は20%)の軽減税率が適用されるうえ、「主たる住居」の売却益であれば、多額の非課税枠があります。
「譲渡損失」となり、「譲渡所得」と相殺後も、損失が残る場合、3千ドル(個別申告は1.5千ドル)まで、他の所得と相殺でき、残額は翌年以降に繰り越すことが可能です。ただし、「主たる住居」の「譲渡損失」は、他の所得と相殺することはできませんので、留意が必要です。
一方、「非居住者」の場合、米国不動産から生じる所得以外の「譲渡所得」は、米国では非課税となります。
<参考記事>【赴任後3年内の売却でメリット最大化】米国駐在員の留守宅売却に係るアメリカ税金【最大50万ドルの非課税枠】
Other Income
最後に、「Other Income」 として、上記いずれにも区分されない所得があり、「居住者」「非居住者」いずれの場合も、「全世界所得」又は「米国源泉所得」を対象に、他の所得と合算し、累進税率にて課税されます。
例えば、駐在員もよく利用する、クレジットカードや銀行口座のリファーラル収入が、これに該当すると考えられます。
リファーラル収入は、申告すべきか、悩ましいケースもありますが、600ドル以上支払いがある場合、クレジットカード会社などは、支払調書Form1099の発行を義務付けられており、Form 1040に当該収入が含まれていないと、IRSから自動的に”Matching Notice” が送付されてくる可能性が高く、適切に申告することが肝要です。
さて、次回は、米国の個人所得税申告における、各種控除について、語りたいと思います。
<次回記事>
【DeductionとCredit】米国駐在員のForm1040申告における各種控除【ITIN申請には旅券所持証明が必要】