【Net手取額】米国駐在員のアメリカにおける税金申告方法【Gross支給額】
前回は、米国の個人所得税申告における「居住者」「非居住者」の区分に加え、離着任の年に「二重身分」となる場合、「通年居住者」を選択することで、有利になる可能性があることを、学びました。
<参考記事>
【米国駐在員】アメリカにおける居住者・非居住者の考え方【二重身分の有利・不利検討】
今回は、実際の申告手続きと、その方法について、語りたいと思います。
日本では、給与所得だけであれば、会社の年末調整のみで事足り、自ら確定申告が必要となるのは、医療費控除・住宅ローン控除・ふるさと納税などを活用する年に限られます。一方、米国では、連邦税・州税に対して、自ら個人所得税の申告書を提出することが、義務付けられています。
Net手取額とGross支給額
駐在員の場合、会社からの給与支払いは、事前に定められた各種手当を含めた「Net手取額」として支給され、別途、会社側で、税金を考慮した「Gross支給額」を算定し、会社が、源泉徴収相当額を納付するケースが多いです。
その場合、実際の申告時には、会社が契約する会計事務所が、個人所得税の申告書を作成し、それを駐在員本人が当局に提出します。
基本的には、「Net手取額」が保証されるとの考えとなりますので、会社で算定した「Gross支給額」に基づく源泉徴収相当額と、実際の税額に差異が生じる場合、会社側がその差額を負担又は享受することが一般的です。
Net手取額方式の申告
「Net手取額」方式の場合であっても、駐在員は、申告書作成のための各種情報提供が必要になります。
その結果、例えば、留守宅の賃貸収入が全世界所得として課税所得に含まれる場合は、源泉徴収額を超えて、納税する必要が生じます。そのため、会計事務所が作成した申告書と、源泉徴収額に差異がある場合には、その内容を確認する必要があります。
当然、会社の給与所得以外の原因で、追加納税が必要となる場合には、駐在員本人が納税することになります。
Gross支給額方式の申告
反対に、「Gross支給額」を事前に定めている会社もあり、この場合、駐在員は「Gross支給額」から源泉徴収額を控除した金額を受け取ることとなります。
そのため、駐在員は、Turbo Taxなどの申告ソフトを用い、源泉徴収票W-2を始めとする各種情報をもとに、自ら申告書を作成する必要があります。
知人の勤務先では、最近「Gross支給額」から、「Net手取額」に変更になり、毎年の憂鬱な作業から、開放されたと喜んでいました。会社としても、駐在員が、社業とは関係ない、税務申告書作成に時間をかけ、場合によっては節税策の研究に夢中になるのを防ぐとの観点からは、多少コストが掛かっても、「Net手取額」のほうが、望ましいとの考えもあります。
申告期限
このようにして作成された、個人所得税申告書の申告期限は、毎年4月15日となっており、遅延すると、ペナルティや利息が課されます。
なお、2019年の申告については、コロナ禍の影響で、申告期限が、2020年7月15日まで延期されました。
さて、次回は、駐在員が特に留意すべき、米国源泉所得と、国外源泉所得の区分について、語りたいと思います。