【米国駐在員】アメリカにおける居住者・非居住者の考え方【二重身分の有利・不利検討】

前回まで、駐在員の、出国前後の日本での課税関係や、留意点を学びました。今回から、米国での課税関係について、述べたいと思います。

<参考記事>
【駐在員】日本の居住者・非居住者の考え方【出国前後】
【駐在員】日本での確定申告方法【納税管理人】

まず、日本でもそうであったように、米国における申告でも、「居住者」「非居住者」の判断が、税務申告の出発点になります。ただし、米国では、「二重身分」(Dual Status) という考え方もあり、より戦略的に、納税者としての区分を、検討する必要があります。

居住者・非居住者の判断と課税対象

個人の申告は暦年ベースとなり、その申告年において、米国での滞在日数が31日未満であれば、「非居住者」です。

一方、31日以上であれば、次の判定ステップに進み、「その申告年の滞在日数」「申告年の前年の滞在日数の1/3」「申告年の2年前の年の滞在日数の1/6」の合計が、183 日以上であれば、「居住者」となります(183日テスト)。申告年の滞在日数のみならず、前年・前々年の滞在日数も、一定の掛け目を用いてカウントされるのがポイントで、出張や旅行での米国滞在日数を、慎重に検討する必要があります。

海外駐在員の場合、赴任や帰任に伴い、年の途中まで「非居住者」で、その後「居住者」(またはその逆)になるケースが想定されます。「居住者」部分は、全世界所得に課税、「非居住者」部分は、米国源泉所得のみに課税、というのは日本と同様の考え方です。

ところが、特に配偶者がいる場合、納税者のステイタスの更なる検討により、納税額の有利・不利を判断する必要があるのが、米国税制の特徴です。

二重身分の通年居住者選択

1年の中に「居住者」「非居住者」が存在することを、「二重身分」と呼びますが、「二重身分」や「通年非居住者」の申告では、「通年居住者」に認められる特典に制限が課されます。

中でも、「夫婦合算申告」が使えない点が、最大のネックとなります。この点、米国税制は、「二重身分」の既婚者は、誰でも、「通年居住者」を選択し、年間の全世界所得に対し、「夫婦合算申告」することを認めています。

米国で、通年で全世界所得に課税されたとしても、外国税額控除の活用や、「夫婦合算申告」によるメリットが上回るのであれば、「通年居住者」を選択するのが、合理的となります。特に、様々な手当などで給与が高額になりがちな駐在員の申告では、あえて「通年居住者」で申告するケースが、よく見られます。

非居住者の二重身分選択

一方、年の後半に赴任したことなどにより、「通年非居住者」となっている人が、一定の条件を満たすことで、「二重身分」として申告することも可能です。

「二重身分」である以上、「夫婦合算申告」は使えないものの、「居住者」としての控除等のメリットが大きい場合は、検討する価値があります。この条件を満たすためには、少なくとも31日以上連続して米国に滞在し、かつ、その滞在日数が連続滞在期間の初日から年末までの日数の75%以上である必要があります。

つまり、年の前半に31日以上連続滞在したものの、後半には米国に滞在していない場には、この条件に当てはまらないことになります。なお、「通年非居住者」が「二重身分」のステイタスを選択する場合には、翌年に183日テストに合格するのを待って、申告書を提出する必要があります。

次回は、実際の申告手続きと、その方法について、語りたいと思います。

<次回記事>
【Net手取額】米国駐在員のアメリカにおける税金申告方法【Gross支給額】

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