【海外駐在時】不動産に関する日本の税金①【売却と特別控除】

日本で既に住居を購入済の場合、海外赴任に際し、売却又は賃貸の判断を迫られることになります。今回は、居住用不動産に関する、日本の課税関係について、学びたいと思います。

まず、売却の場合です。

不動産売却により利益が出る場合、「分離課税」となり、給与所得などの他の所得とは合算せず、「譲渡所得」として税額を計算します。税率は、所有期間によって異なり、5年以下の「短期譲渡所得」では39.63%、5年超の「長期譲渡所得」では20.315%で、所有期間10年超では、更なる税率優遇があります。所有期間の算定には留意が必要で、実際に売却した時点ではなく、売却した年の1月1日時点が基準となります。

また、「譲渡所得」の計算では、購入時や売却時の仲介手数料などの諸費用を差し引くことで、売却益を抑えることができる一方、不動産の購入価額からは、保有期間に応じた建物の減価償却費を差し引く必要があります。

上記に加えて、海外駐在員のように、一定期間、日本を離れることが明らかな場合、「特別控除」の活用が考えられます。

「特別控除」とは、居住用不動産であれば、所有期間に制限なく、3,000万円を控除できるもので、譲渡所得を大幅に圧縮することが可能になります。この「特別控除」は、3年に1度の回数制限や、住宅ローン控除との併用制限があるものの、海外赴任に伴い居住用不動産を売却するとの観点では、非常に使い勝手の良い制度です。

次に、売却時に、損失が出る場合です。「分離課税」により、譲渡損失は、譲渡所得としか相殺できないのが基本です。ただし、保有期間5年超の居住用不動産を有し、かつ、譲渡価格に対し、オーバーローンとなっている場合に限り、一定の条件のもと、譲渡損失を他の所得と損益通算可能とする特例があります。

譲渡益の場合はもちろん、譲渡損失で特例を使う場合も、出国時までに確定申告を実施するのが原則です。出国後に申告する場合は、出国前に納税管理人を選任し、出国後に納税管理人を通じて、確定申告する必要があります。

次回は、賃貸する場合について、解説します。

<次回記事>
【海外駐在時】不動産に関する日本の税金②【留守宅の賃貸】

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